一井かずみさんの3作品を読んだので一気にまとめてみます。
今回は1作品でなく、一井かずみさん作品一括りで3作品紹介しつつ、まとめてみようと思います。
紹介するのは、『さあ 秘密をはじめよう』『どうせもう逃げられない』『きっと愛してしまうんだ。』の3作品。
『さあ 秘密をはじめよう』
さあ 秘密をはじめよう(1) さあ 秘密をはじめよう (フラワーコミックスα)
- 作者: 一井かずみ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/10/05
- メディア: Kindle版
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ざっくりなあらすじ
社内恋愛禁止の商社で働く一般事務職の平凡だけど気遣いができる女子の真衣に、同じ部署のエリート営業マンの加藤が一目惚れして告白されてしまいます。真衣は一度はお断りするものの、社則をやぶって隠れて付き合うことになる。
見つかれば男性社員は左遷。女性社員は謹慎処分という名の事実上の退職勧告。という厳しい罰則がある中、仕事を通してお互いを理解していきながら、無敵のエースを陰ながら支える真衣。
当て馬なキャラが出てきてお互いに危機が訪れたり、出張や転勤などで遠距離になってしまったり、よくある社内恋愛事情が繰り広げられます。
真衣に関わるようになってからの加藤の人間的な成長と、真衣も自分は何の変哲もない普通の人だと自己評価低めだったのが、仕事を通してのやりがいや自分の存在価値を見出すことができていく。
最後はもちろんハッピーエンドですけど、これで終わっちゃうんですか!と少し続きが気になっちゃう物足りなさがあります。ただ、タイトル的に考えればこの辺で留めておくのが正解なのかもしれないです。
この作品の魅力
- 自己評価低いけどポテンシャル持ったがんばり屋さんの主人公の真衣が愛おしい
- 働く女性の悩ましい問題に気づく
全7巻で、完結済みの作品です。
社内恋愛禁止でかなり厳しい罰則があるって、イマドキどうなんでしょうね。。
確かにやりづらいことが発生したりするので、ないほうが周りからしたらありがたいけれど、家族よりも一緒にいる時間が長い社会人生活の中で、人となりは必然的に深く分かってしまうわけで..人として惹かれ合ってしまうのは仕方ないんじゃないんですかね。
昭和的な古い体質の会社って感じで受け止めて、これはフィクションって思っていればなんともないです。
バレちゃうの?どうなっちゃうの?毎回ハラハラドキドキさせられるので、気がつけばもう最終巻。みたいな状況になっていました。
会社にただ属するだけでなく、それから自分がどうしたいか。自分のアクション次第で、道は開けてしまうんだな~とか思ったり。
目立たない小さなことをしているようにみえて、大きく目立っている人を下支えすることも立派なお仕事なんだってことを表現していたり。
え?ありえなくない?みたいなことも多々ありますが、真衣の自己評価低い感じとか、小日向さんのポジティブでちゃんと周りのことを把握しながら働く姿とか、働く女性ならグサグサ刺さったり、こういう女性でありたいとか思ったりするんじゃないかな。
ただ社内でこっそりラブラブしていく感じではなく、働く中で高め合っていく感じがするのが良いなと感じるポイント。
『どうせもう逃げられない』
- 作者: 一井かずみ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/06/04
- メディア: Kindle版
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ざっくりなあらすじ
普通のOLになることが夢という主人公の野田蔵なほ。それまでは契約?派遣社員として働いていて、正社員になるべく就職活動をしていた。
内定が決まるまでのつなぎで短期バイトをし始めた「ソロデザイン」という小さなデザイン事務所の社長に(ラブではなく)気に入られて、ある事件をきっかけにソロデザインの事務員として拾ってもらえることになった。
なほは社長に惹かれていて、社長の向坂さんもなほに惹かれていくものの、過去に起きた・起こした出来事に対して良心の呵責を感じていて、くっつきそうでくっつかない。
なほに手を出しておきながら「やっぱ無理」みたいな態度を何度も何度も繰り返す向坂さんよ..かなりダメンズ。
なほもそろそろ諦めて、余くんとくっついた方がぜったい幸せだと思ったよ。
そんな煮え切らない態度ばかりで日和ってた向坂さんも、どうにか過去の呪縛から脱することができて、無事ハッピーエンド。
この作品の魅力やツッコミ
- 主人公なほの健気さについ応援したくなる
- 向坂さんいろいろとヒヨリすぎ
- 諸悪の根源は兄嫁であり幼なじみの「ちはる」
全10巻の作品です。
何度もキスとかしちゃうんですよ、でも「無理」とか言うんですよ。
無理って言っておきながら、なほが他の人に取られちゃいそうになるとそれはそれで嫌っていうか、自分の手中にはおさめておきたいみたいなところがあって、ダメ男すぎるw
向坂さんの抱える闇は相当深くて、その深くて真っ暗な闇の中に一筋の光を指し続けているのが主人公のなほだったわけで。いろんな苦難を乗り越えながら健気に向坂さんのそばを離れない姿、、ついつい応援せざるを得ません。
でも、この物語の諸悪の根源は、もうこの世にはいない兄嫁の「ちはる」だと思うんです。
兄弟の中で「兄」を「夫」として選んだのであれば、自分に気のある弟にむやみに近づくのは卑怯だと思う。
「男女の友情は永遠にある派」だとか、もう完全に自分は「あなたの姉」とでも思っている人だったのかな…
なんと罪深く亡くなっていったのかしら…
とにかく不慮の事故で亡くなってしまった「ちはる」からの呪縛からめでたく抜け出せて、本当に良かったです。
ラストはあれでよかったんでしょうか?
もっと違う描き方でも良かったんじゃ…とこれまた思ってしまったけれど、それでもとっても好きな作品です。
『きっと愛してしまうんだ』
- 作者: 一井かずみ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2016/07/08
- メディア: Kindle版
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ざっくりなあらすじ
美人で仕事のできる主人公の藤田歩。ただし、人付き合いが苦手で本当はすごく不器用でかわいい一面もある。感情を表に出すのが苦手のようです。その逆のような太陽みたいな人当たりの良い好青年で歩と同期の谷地くん。
この2人が歩のおじいさん宅でひとつ屋根の下暮らすことになり、次第に鉄壁だった歩が谷地くんとの同居生活の中で、性格がまぁるくなっていくお話。
この作品の魅力
- 人付き合い苦手で本当は不器用な歩かわいい
- 谷地くんいい人
- 歩も谷地くんも完璧ってわけじゃない
- 里中ちゃんいいキャラ
プチコミックで連載中で現在4巻まで出ている作品です。
人付き合いが苦手の歩が、ひとつ屋根の下で同期の谷地くんと同居生活するなんて最初はありえない話だったけれど、次第に心を開くことが出来ていく課程と、その延長で職場での雰囲気もだんだん変わっていく感じが見ていてホッコリします。
早くも3巻でくっついてしまっているし、4巻では社内で谷地くんの彼女は歩だと公表もしているし..
次巻どうなるんでしょうか..
そんなに波風たたずにとにかく読んでいて常にほんわかする作品なので、これから急な展開になる気が全然しないので、このままふんわり終わるのか、大きな波乱が訪れるのかは次巻が肝かもしれないですね。
3作品を読んで
一井かずみさん作品の特徴は、社内恋愛系が多い。
私が読んだことのある3作品はすべて社内恋愛。
舞台は商社とデザイン事務所。
デキるSキャラ上司と平凡で普通の子だけどものすごくがんばり屋さんな主人公の女の子。
そういう感じ。
あ、いま連載している『きっと愛してしまうんだ。』は、仕事できる系女子が主人公だったね。
『さあ 秘密をはじめよう』の加藤を女性にした感じのキャラ。
鉄壁と見せかけて中身はもろい。
どの作品もそうだけれど、お互いに影響しあって少しずつ変わっていく心理描写が丁寧に描かれています。
そういうの描くのが上手な漫画家さんですね。
ストーリーが素敵なので補完されているんだけれど、しいていうと、絵のバランスが崩れているときがあるのが気になるかな。
手の大きさとか背の高さとか、輪郭ないとか。
荒く描かれている部分がたまにある。あと、誰が誰だかわからないキャラが似ている時があるw
制服着たOLさんだともう全員同じ服着てるから、、前髪くらいでしか判断つかないときある。
世界観がっつり崩しているわけではないので、すごくひどいわけではないです。
強いて言うならです。。
働く女性を描く中で、特に『さあ 秘密をはじめよう』に色濃く出ていた問題なんだけれど、女性は女性らしく仕事をする中で、自分の存在価値ややりがいを見出せてきた矢先に、「結婚」とかが絡んできて、結果辞めざるを得ない状況になったり、夫の状況に応じてその芽も紡がれてしまう問題があるなぁと。
これは避けて通れないことだし、それは当人たちで折り合いをつける話であって、会社や周りがどうこうできる問題ではないことの方が多い。
女性が男性と同等に働くってことはできそうだけど、やっぱりどうしたって同等にはできないんじゃないかなって、一井かずみさんの作品を読んでいてぐるぐる考えてしまう私なのでした。